前回のブログで、「ほぼ2年半ぶりのブログ更新です。」と書きましたが、僕は2年半のブランクですが、ケイタは実に7年間のブランクがあります。(笑)

昔ケイタが使っていた道具で保存してあったものもありますが、現状に合わせて新しく製作したものも少なくはありません。特にスピニングマスターズのお家芸でもあるディアボロとファイヤートーチやファイヤーデビルなどのファイヤーパフォーマンス用のアイテムは仕様が変わりました。

ファイヤートーチに関してはOK!ヒロヤソロでのパフォーマンスとちょんまげケイタとのコンビ芸との大きな違いはトーチの燃焼時間。ルーティンも全く違うので燃焼時間は重要で、ショボい炎になってしまっても燃えているから大丈夫では論外です。難易度の高い技もあるので、ある程度はミスをして尺が伸びたとしてもそこそこの炎の大きさいや維持している時間もスピニングでは重視していますし、大道芸ならではの自然環境下での風の影響も考慮に入れてセッティングされています。

ファイヤーデビルも燃焼時間だけではなく炎自体の大きさも必要となりました。何故という部分はスピニングマスターズのイベントレポートの方でも画像や動画もたくさん出ていると思いますので割愛。では、「どのようにして?」という部分ですが、主に耐熱布(ウィックとかバンテージとも言われています。)の燃焼時間を計算して仕様を大幅に変更するために、日本では入手できない厚みの耐熱布を海外から大量に輸入して使っています。(※注意 スピニングで購入したものはジャグリング用として開発されたもので、自動車のマフラーやエキゾーストマニホールド用などの熱干渉対策用のバンテージではありません。10年ほど前にスピニング独自でそれらの自動車用のバンテージを流用するためのテストをしたことがありますが、燃焼時の煙や粉が舞い上がりジャグリング用としての流用はとても危険で実践投入できませんでした。それ以来ちゃんとした安全なアラミド繊維の耐熱布を使用しています。)

1度に輸入した量が100メートル。中国の生産工場と直接交渉し、耐熱布本体は日本で購入するよりも半額ほどで良質で安価です。25メートルロールで4個段ボールに入って空輸で届き、税関でたっぷりと輸入関税を取られました。(笑)結局は輸送費や税金が加算されると日本での購入価格より、ちょっぴり安かったのかな?って感じです。

ま、我々にとっては必要なものなので、それはそれで構わないのですが、スピニングのコンビ芸では耐熱布の消費量がおそらく大道芸界日本一!ではないかと思っているほどであります。

※上の耐熱布が1mmで市販のファイヤートーチを購入すると付いてくる標準的なもの。下は今回輸入したスピニング仕様の3mm厚のアラミド繊維の耐熱布。

それはどれ程違うのか?通常の市販品のファイヤートーチには1mm厚か1.5mm厚の耐熱布が30cmから40cmほど巻かれていますが、スピニング仕様では3mm厚(しかもソフトで燃料を含みやすい編み方のもの)を60cm使用しています。

ちなみにOK!ヒロヤソロショーで使用していたトーチ用の耐熱布と現在のデュオプレイで使用している耐熱布の長さを比較しただけでも下の画像を見てもらえば一目瞭然。

また特記すべきは昔使用していた耐熱布(現在は製造中止)にはケブラー繊維で細いスチールワイヤーが補強のために編み込まれているのもでした。確かに縫い目がほつれないし、丈夫で耐久性もありますが、火を着ける部分に金属があるというのはジャグリングで使用したときに間違って反対側を取ることもあり、やけどの確率や、現在のように炎の大きさ、燃焼時間などを実現しようと思うと60cm以上巻くとなれば重さも気になります。

現在使用している耐熱布もケブラー繊維でできていますが、ワイヤーの編み込みはなく、非常にソフトで軽量。これをかなり強めにテンションかけながらしっかり巻いたものが現在のスピニングマスターズのファイヤーショーで用いられているトーチの仕様なのです。軽量でジャグリングのバランスも良く、更に大迫力のビッグファイヤーなのは良いのですが、おかげで頻繁にメンテナンスが必要で、巻きなおすのも本数が本数だけに一苦労です。

上の写真のようにスペアを数に入れなくても12本(笑)…。

 

夏は炎天下という状況で耐熱布に燃料を含ませて準備したのが蒸発してしまうなどの理由もあって巻付け量も増えたり、冬場は少し減らしたりとか調整も可能ですが、結局冬から春にかけては特に強風という環境下でショーをすることもあるので耐熱布の巻付け量を調整するというのはあまり現実的ではありません。現在は一定量でオールシーズン常に同じ量を巻いてメンテナンスしています。現在のショーのペースでは1ヶ月に一度くらいの巻替えは必須です。

 

スピニングマスターズのファイヤーアイテムはトーチだけではなく、OK!ヒロヤもしばらく使用していましたが、ファイヤーデビルスティック。

7年前の活動休止までにもケイタはファイヤーデビルの演目がありましたが、現在はまったくルーティンも変わり、燃焼時間も必要なのでトーチで使用する耐熱布の幅が5cmに対し、ファイヤーデビルで使用しているのは10cm幅と倍です。

燃料代が…とか、耐熱布のメンテナンス代が…と、パフォーマンスコストを気にするパフォーマーもいるのかも知れませんが、スピニングは気にしていません。あくまでも人は人。自分たちには必要なものをより安全に、そしてオリジナリティを大切に、これがスピニングのポリシーです。

ファイヤーデビルについてはちょんまげケイタは重めが好みで、OK!ヒロヤは標準的なウエイトバランスの仕様です。OK!ヒロヤ仕様は木製のテーパー状の本体にアルミの丸棒とウエイトが取り付けられています。全て自作したデビルスティックです。

 

対するちょんまげケイタ仕様は完全オリジナル製作です。センターパイプは直径22mmのアルミパイプの中心だけは木製丸棒ですが、全体はオールアルミ製で、両端にはなんとライトセーバーのパーツを加工して取り付けてります。(ちょうどベストフィットで良かったので)これ以上は無いというほど軽量と丈夫さを実現できました。

今でもソロショーでは使用するので、どちらも専用ケースに入れてスピニング号で常時持ち歩いてそれぞれパフォーマーが使い分けをしていますが、万一のトラブルや破損の時にはスペアにもなるので重宝しています。

ん?破損? と疑問に思われるかもしれませんが、普通のデビルスティックであれば、固い木製であっても材質はせいぜい樫の木。ハンドスティックも本体も木製です。元々はコンコンと叩く使い方をする道具なのでハンドスティックは強度不足だと簡単に折れます。実際にちょんまげケイタが折った経験は何度かありました。

なので、以前は強化木という樹脂を浸透させた固い丸棒を使っていましたが、それでもファイヤーデビル用のハンドスティックとしては役不足なので、現在はファイヤーデビルスティック専用として強化木に更にアルミパイプを被せ、すべり止めにシリコンチューブを被せて製作してあります。

市販品は本当にカラフルで良いのですが、上記のように耐熱布の巻付け量が多かったり、オールアルミの金属製の本体を叩いたり回したりと、コントロールするために必要な強度はありません。スピニングマスターズとしては自作が一番ということなのです。

 

耐熱布の話題ばかりでしたが、実は使用している燃料の種類もいろいろです。

使用する現場の環境やお客さんとの距離感、当日の風の強弱、本当にいろいろなことを考慮しながら安全第一でのショー実施を心がけていて、更には匂いや煙などもごくごく微量に抑えてるように工夫し、快適なギャラリー環境のことも重視しています。

 

普通にガソリンスタンドやホームセンターなどでも購入可能な白灯油。石油ストーブ用として販売されているものですが、これは匂いがあります。家庭用の石油ストーブ用なのでわかりやすいように特有の匂いを付けてあるようです。一旦燃えてしまえば若干の煙も出ますが燃焼時間は長く持ちます。(煙に関しては耐熱布のメンテナンスを頻繁にすることで随分減少します)
たまにお客さんとの距離があるところではスピニングも使用したりすることもありますが、本当に条件が整う現場でしか使用しません。

エコ灯油。現在は市販されておりません。エコ灯油とはネーミングされていますが、灯油系ではなく、天然ガスを液化したもので、無臭無煙です。石油のような独特な匂いが無く、こちらも家庭用の石油ストーブ用として販売されていましたがあまりにも高価だったためか製造していた昭和シェルは生産中止にしてしまいました。

スピニングマスターズでは生産中止時に購入元から連絡を頂いて大量に購入でき、ストックもしてあり、現在もメインの燃料はエコ灯油を使用しています。燃焼時間も計算しやすく、無臭無煙ということもギャラリーにとってもパフォーマーにとっても安全です。

部分的にしか使用しない燃料でホワイトガソリンもあります。白灯油やエコ灯油がメラメラと燃えていくのに対し、ホワイトガソリンはいきなりボっと点火できるのですが、燃焼時間はあまりもたない特性があります。また、一度点火すれば風には強く短時間であれば比較的大きめの炎を確保できるので、スピニングのショーでいうなれば7トーチパス、強風時のローラーパスなどショーのエンディング付近の演目で活用するケースがあります。

ただし、気を付けなければならないのはホワイトガソリンの特性として揮発性があります。いくら機械洗浄用とか、キャンプ用燃料だと言ってもガソリンと名の付くものの取り扱いには十分に注意をすべきです。

揮発性が高いということは、夏場での使用も蒸発してしまわないように注意が必要です。もちろん、安全面でという意味もありますが、ショーを始める前に燃料を含ませて準備しておいても、実際に使用するシーンになったときに蒸発してしまって点火できない、あるいは点火しても炎がショボいという状態になってしまったことは過去の経験でありましたので、現在は夏場の炎天下でのショーにおいてはかなり気を使います。

この点でもOK!ヒロヤのソロショー実施よりも、コンビ芸でのメリットとしてどちらかがショーを進行中に、もう一人が燃料の準備を落ち着いてできるのでより安全に、そして確実にトーチの準備ができます。

 

他にも火炎噴射装置のメンテナンスなども僕の担当ですが、ここまでブログを書いていて、随分と長文になってしまったので、この装置についてはまた別の機会に改めて書こうと思います。ファイヤーパフォーマンスのイメージが色濃いスピニングですが、2024年からはこんな看板に変わりましたので、この画像で今回のブログを締めくくりたいと思います。(笑)

次回は ディアボロについての話題を!ではでは。